 神経因性膀胱の治療薬
神経因性膀胱の話は第6回診察室だよりのとおりです。その治療薬として、白井医師が処方しているのが、ウブレチドとエブランチルです。
診察室だよりにもありましたが、膀胱は自律神経の命令に従って行動しています。おしっこがでないというのは、膀胱を風船に例えれば、口の部分に当たる括約筋が締まっていて、袋の部分に当たる平滑筋はゆったりしている状態です。これを薬で反転させ、袋の部分を緊張させて絞り、口の部分をゆるめれば、排尿へと身体は傾くのではないかと誰かが考えたのでしょう。エブランチルは交感神経系から、ウブレチドは副交感神経系から、膀胱平滑筋を収縮させ、膀胱括約筋を弛緩させる薬です。
効き目のデータはどうでしょうか。メーカーによれば、ウブレチドの有効率は66.7%〜84.0%、エブランチルは改善率56.6%(やや改善を含めると88.4%)という治療成績が出ています。よく効くのですね。
どちらの薬も自律神経系に作用する薬で、膀胱にだけ作用する訳ではありません。自律神経は全身を走っているので、実は全身に作用しています。不快な症状として発現すれば「副作用」となります。エブランチルは血管に作用してこれを拡張させるので、高血圧治療薬としても使用されています。この作用が強くでると血圧が下がりすぎて「ふらつき」という副作用になります。副作用だけを切り離せないことがおわかりいただけると思います。副作用の予防と対策に一番効果的な方法は、処方した医師に体調を細かく報告することです。
薬の安全性を考える上で私が大切に考えるのは、いつ発売された薬かという点です。ウブレチドは1968年エブランチルは1988年に発売され、長期間に多数の患者様に使用されたデータが蓄積されていますので、それをふまえて医師が安心して処方できる薬ではないかと思います。薬自体は安全になったり危険になったりするものではなく、安全に使うためのノウハウが蓄積されてくるのです。
薬剤師 白井速
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