医療法人白井内科クリニック
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診察室便り その7

糖尿病と心筋梗塞について(1)

どなたも心筋梗塞という病名は聞いたことがあると思います。親戚の人が心筋梗塞で亡くなった、とか、同僚が心筋梗塞で運ばれた、新聞でだれそれが心筋梗塞で入院中と報道されたとか、非常に身近な病気であることは間違いありません。また、癌や脳卒中とならんで、日本人の三大死因の一つでもあります。

ではその心筋梗塞とはどのような病気なのでしょうか。多くの方は心筋梗塞について、胸を押さえて苦しがり、救急車で運ばれるイメージを持っているでしょう。まさにその通り、多くの心筋梗塞の患者さんは全身にあぶらあせを流し、胸が苦しいと訴えて、救急車で病院に搬送されてきます。このまま死ぬんじゃないかと思ったと、多くの患者さんは語ります。かように心筋梗塞とは恐ろしい病気ですが、いったいどのような病気かと申しますと、心臓の血管が閉塞することによって心臓の本来の機能である、全身に血液を送り出すポンプとしての機能が低下したり、多彩な不整脈が出現して心臓が空うち状態になり、血圧が下がってショックになったりします。元気な心筋梗塞の患者さんもいます。昨夜胸痛が起こってしばらく眠れなかったけれどそのほかは大丈夫とかいって、心電図をとってみると心筋梗塞であった、というかたもけっこういます。

心臓の血管は大動脈の付け根に左右あり、右冠状動脈、左冠状動脈と呼ばれています。右冠状動脈は心臓の後ろ側や下(下壁)に分布し、左冠状動脈はすぐに大きく二つに分かれ、心臓の前面を流れるのが前下降枝、左側面から下壁を流れるのが回旋枝と呼ばれます。結構太い心臓の血管がいきなり詰まるのではなく、心筋梗塞になるには長い歴史があります。血管が詰まるのは通常血栓ができて詰まるのですが、正常の血管には血栓はできません、動脈硬化で血管自身に病変があり、狭窄が起こり、血管の内側の膜に異常が生じて血栓が生じます。その血栓がいきなり狭窄した血管を詰めてしまって心筋梗塞が生じます。なかには、血管の動脈硬化部分がもろくて断裂してしまい、それが原因で心筋梗塞になったり、心臓の血管自身が痙攣を起こしたように収縮して心筋梗塞になる人もいます。

どの心筋梗塞も、動脈硬化で異常を来している血管に生じる、という点は共通しています。血管が閉塞するとそこから先の心筋に血液が流れません。心筋の細胞は絶えず収縮するために大量のエネルギーと酸素の供給を要求します。ということは、大量の血液の潅流を必要とします。その血流が途絶えたら収縮できず、そのために心臓のポンプ機能は低下し、全身に血液を送り出せなくなります。特に左冠状動脈の前下降枝は左心室を主に潅流しているため、その血管が詰まって心筋梗塞を起こした場合、心不全になることがよくあります。心不全とは全身の酸素需要要求に対し、心臓が応じられない、血液を送り出すことができないということです。症状としては、安静にしているのに猛烈な息切れ、呼吸困難感が生じます。心不全は人間の死因のなかで最もよくあるものの一つです。心筋梗塞で心不全になり死亡するという図式です。そこで、心筋梗塞を予防するにはどのようにすればよいかについて、述べてみたいと思います。

心筋梗塞は心臓の血管が動脈硬化を起こして生じるため、動脈硬化を起こしてくる病態をよくすることが重要です。どのような病気が動脈硬化を起こしてくるかと申しますと、まず大事なのが高血圧、ついで高脂血症、糖尿病、喫煙などです。様々な統計データが出されていますが、糖尿病だけでは、通常の人の2−3倍心筋梗塞発病リスクが高まります。しかし、糖尿病だけ存在するという人は少なく、通常、高脂血症や高血圧を合併していますし、男性ではたばこを吸う人も多いようです。糖尿病で、たばこを吸う高血圧の男性では通常の20数倍心筋梗塞の発症リスクが高まるという報告もあります。また、各病気の重さと心筋梗塞発症とは重要な関係があり、血糖が高いほど、コレステロールが高いほど、血圧が高いほど心筋梗塞を起こしやすくなります。それを予防するにはそれらの発症リスクを辛抱強く改善してやる必要があります。まず禁煙。これはすぐできます。糖尿病、高血圧、高脂血症については肥満があれば是正し、適切な食事療法に取り組み、必要とあらば、薬物治療を受ける、こういった取り組みを持続するしかありません。自分の病気をよく知り、データを自分の取り組みに生かしてゆくことが非常に大切です。病院や健診のデータを自分の治療にどんどん生かしてゆくのです、検査データに一喜一憂せずに継続的に病気に取り組むことこそが心筋梗塞の唯一の予防であるといえます。

心筋梗塞という言葉は大多数の患者さんは知っていますが、実際に発症した患者さんは何が自分の体に起きているのかさっぱりわかりません。胸痛がないことよくあります。特に高齢の糖尿病の患者さんでは症状に乏しく、しんどくて病院を受診したけれどよくわからず、自宅に帰ってそのまま亡くなったという方もおられます。重要なことは、心筋梗塞やその前兆のサインを、いかに自分で認識して、医療機関に伝えるかです。患者さんの中には、先生、風邪引いてしんどいんや、注射打ってくれ、と来院されてたまたま糖尿病、高血圧、喫煙でマークされていたため念のため心電図をとったら心筋梗塞であった、ということもありました。後で話を聞くと、胸部圧迫感がかなりあったそうです。多くの患者さんは自分で思っているよりずっと、病気の症状をどのように表現したらよいかわかりません。その表現の仕方で心筋梗塞が見逃されかねません。どのように表現すれば医師に伝わるか考えてみたいと思います。病気で病院に行けば適切に診断されるというのは、ある意味では当然と思われるかもしれませんが、現実はなかなか難しい問題があります。まず、息切れ、これは非常に重要です、息が苦しいということは心臓や肺に急激な異変が起こっている可能性を示唆するため、非常に重要な症状です。つぎに胸部圧迫感、胸痛、首の下や左上腕に及ぶ痛み、これがあれば医師は心筋梗塞をまず思い浮かべます。ついで冷や汗。心筋梗塞の患者さんは発症時全身にねっとりと冷や汗をかいています。これもまた心筋梗塞に直結する症状です。これらがあれば医師に自分は心筋梗塞ではないかと問うてください。そうすれば医師は大あわてで心電図をとってくれます。

心筋梗塞の前触れともいうべき症状もよく見かけます。いつもなら上れていた階段が急にしんどくて上れなくなった、とか少し動いただけで息が切れる、などという症状は要注意です。安静時でも胸痛が生じてきた、となってきますとかなりやばい。不安定狭心症と呼ばれる症状です。このような症状が出た場合、すぐに病院を受診するのが肝要です。通常、即座に入院になります。



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