医療法人白井内科クリニック
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診察室便り その5

糖尿病の運動療法

今回は糖尿病の運動療法について述べたいと思います。糖尿病の治療にとって運動療法は必要不可欠のものですが、普段全く運動する習慣がない患者さんが大半で、また現代の日本社会では安心して運動に取り組める場所も、施設も限られており、指導する側も今ひとつ熱心でない、などの理由で、しっかり取り組んでいる方は少数なのが現実です。

*運動と血糖値
骨格筋はインスリンの作用によりブドウ糖を筋肉内に取り込み、筋肉収縮のエネルギー源として利用します。意外なほど効率よくエネルギーを産生します。全身の筋肉はかなりの量があり、多量のブドウ糖を消費しますので運動は血糖を正常化する最も有効な手段の一つです。しかし、運動時間が短いと、筋肉内のグリコ−ゲン(ブドウ糖の鎖のようなもの)がまず利用されるため、筋肉が十分にブドウ糖を取り込んだり、脂肪酸を取り込む前に終わってしまい、過剰なブドウ糖や脂肪酸が利用されないままになってしまいます。

*正しい運動療法
そこでゆっくりながらも長い時間をかけて行う歩行や自転車、ジョギングなどの有酸素運動がまずおすすめです。運動療法の教科書をみると一日20分の歩行を2回くらい行うのがよいと書いておりますし、毎日の生活の中で実現可能な運動といえばそれくらいがせいぜいでしょう。バーベルなどの重いものを持ち上げたり、機械によるトレーニングは、あまりおすすめできません。それらが効果があるとする報告もあるのですが、大多数の患者さんは筋肉痛やトレーニングする場所の問題で長続きはしません。歩くことは軽い運動のようですが、全体重が移動するわけですから大変な仕事を体はしているわけです。15Kgのバーベルを何回か持ち上げると大変運動している気持ちになるのですが仕事量自身はそれほど多くはありません。実際に糖尿病患者さんの運動療法につきあって血糖を測定しますと、30分の歩行により、人によって差はあるのですが、30-50mg/dlの血糖降下作用があります。長期間の運動療法の継続により、インスリンの効果が改善するとする報告も出されております。当クリニックに通院している患者さんでも、運動療法にまじめに取り組み、インスリンや内服薬を中止できた方はたくさんおられます。それほどに運動療法は効果的です。

*運動してはいけないケース
しかし、運動療法を行うべきではない患者さんもおられます。まず、血糖コントロールがきわめて不良で、どんどん体重が減っている状況、ブドウ糖の不完全燃焼物のケトン体が多量に体で作られている状況では、まずインスリンを使って血糖が改善してからでないと運動は無理です。また、心疾患、特に心臓の血管の動脈硬化に起因する狭心症や心筋梗塞後の患者さんは運動すべきではないと考えられます。たしかにゆっくり歩行ならばいける、という患者さんもおられますが、医師からみると危なっかしくて、止めほしいというのが本音です。また、糖尿病性網膜症が高度になって、増殖性となり、新生血管が出現している場合、運動は禁忌です。膝や股関節、脊椎などが変形して痛んでいる場合も運動は止めた方がよいでしょう、たいてい痛みが悪化します。どれくらい運動すればよいか、運動してもよいのかどうか医師と相談してください。

*運動療法はどう行うか
患者さんからはどれくらいの強さで運動すればよいのか、ということをよく聞かれます。せめて早足で歩かなければ効果がないのではないかという質問がよく出されます。人によってどれくらいの運動強度をきついと感じるかはまちまちですが、おおざっぱに最大心拍数の推定値(220―年齢)の40-60%の運動を20分間持続するというのが一つの目安になります。最初はゆっくり歩いて立ち止まり、脈拍をはかり、少し早くして数分間歩きまた脈拍を計ってみてください。50才の方では上記の40-60%の脈拍は68-104になります。その範囲内で持続すればよいでしょう。おそらくいつもの歩行でそれくらいになります。息が切れるようではきつすぎます。

*食事療法あっての運動療法
運動療法は今まで述べてきましたように、きわめて効果があり、すばらしい治療法ですが、食べ過ぎを運動で解消しようとしても無駄な抵抗です。なにせケーキ一個を運動で消費しようとすると、80-100分の歩行が必要になります。なんといっても食事療法、ついで運動療法といわざるを得ません。

医師
白井俊由

 

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